僕はPost CC OSCEの対策・勉強をしていて以下の悩みがありました。
- 鑑別が挙がらない
- どんな問診・身体診察をすれば良いか分からない
- メモの取り方・プレゼンの仕方が分からない
- 暗記を減らしたい
- 効率よく勉強するために参考になる考え方を知りたい
僕のブログを読んだ後には、上記の悩みが解決されるようにPost CC OSCEの対策・勉強方法について紹介していきます。
Post CC OSCEについて知っていて、勉強法から知りたい人は鑑別編から読んでください。
結論として、勉強方法のコツを一言で表すと、「カテゴリから系統的に鑑別疾患に迫る」です。言い換えれば、鑑別疾患から考え始めないことがコツです。いきなり抽象化された事を言われてもよく分からないと思うので、順を追って紹介していきます。この”コア コンセプト”を知った上で記事を読むと理解が深まると思います。
重要なことは赤字・黄色、太字・黄色、太字の順で書いています。
Post CC OSCEとは?
Post CC OSCEとは、ざっくり言うと6年生の夏頃に行う実技試験です。Post CCとは、Post Clinical Clerkshipの略で、OSCEはObjective Structured Clinical Examinationの略です。OSCEは4年生で受験しますが、その発展版のようなイメージです。以前はAdvansed OSCEや実習後OSCEなどと呼ばれていましたが、今はPCC OSCEが正式名称です。2020年から正式実施予定でしたが、コロナの影響で延期・中止になった大学もあれば、機構の課題のみ実施する大学、両方実施する大学があったようです。私の大学では落ちる人はいましたが、追試がありPost CC OSCEで留年した人はいなかったです。
機構からは医療面接を中心に3課題前後、大学からは独自の課題を3課題前後出題されます。機構課題の例題は公式サイトに掲示は見当たらないですが、Post CC OSCEの時期の1−2ヶ月前になると大学からOSCEに関する動画が配信されるようになり、そこでイメージを掴むことができました。
動画とほぼ同時期に共用試験ガイドブックが配られました。37症候について考えるべき鑑別・問診・身体診察が表にまとめられた冊子で、この表(以下「コアカリの表」と書きます)を覚えて実践できるようにすることをベースに勉強を進める人が多かったです。
大学からの独自課題は様々で紹介できないので、この記事では機構から出題される医療面接についてお伝えできる範囲でお伝えします(2020年出題の問題に関する記述は一切していませんが、もし問題点があればご指摘ください)。
Post CC OSCEの流れ
全体の流れとしては、患者さんが外来または救急室に来院したという設定で、模擬患者さんに対して問診、身体診察を12分間で行い、4分間で指導医への報告を行います。これを3症例前後行います。
具体的な流れですが、まず試験を受ける部屋に入るためにノックを3回して入ります。中に入ると試験管がいるので、受験番号と名前を言ったら着席します。机にある消毒剤で手の消毒をしながら、課題を1分くらい読む時間が与えられますが、この間に机に用意されている鉛筆と紙を使ってメモすることはできません。
患者を呼び入れてくださいのようなアナウンスが試験開始の合図です。課題に記載の名前を見ながら「〇〇さん、どうぞ」と呼び入れます。
「今回担当させて頂きます学生の××です」「確認のためお名前と生年月日を教えてください」のように自己紹介と患者確認を行なってから医療面接(問診・身体診察)を開始します。問診は目安6分で切り上げ、手指消毒をしてから身体診察を6分程行います。問診・身体診察の時間管理は机に置かれたタイマーを使って自己責任で行っても良いことになっています。
個人的には試験開始のアナウンスと同時にまず、机にあるタイマーを6分にセット・スタートさせてから患者さんを呼び入れることをお勧めします(アナウンスは試験開始時、その12分後の医療面接終了・指導医への報告の指示を知らせる時、その4分後の指導医への報告終了を知らせる時の合計3回放送されます)
僕の場合、試験途中、6分経つとタイマーが鳴ってしまいますが、「すいません」と言いながら止めれば問題なかったです。模擬患者さんに怪訝な顔は特にされませんでした。
医療面接の勉強法については後述します。
身体診察を終えたら、「ありがとうございます。今から指導医と相談して今後の方針を考えます。最後に何か質問はありますか?」「なければ以上になります。ありがとうございました」などと言って、終了のアナウンスがあるまで静かに待ちます。
身体診察の途中で終了のアナウンスがあった場合は、すぐに「以上になります、ありがとうございました」と言いましょう。感謝の言葉は人としても試験としても必要な言葉です。
身体診察終了のアナウンスと同時に指導医への報告を4分でするようアナウンスされます。
指導医への報告は、最初の1分をメモのまとめ・要点の整理に充て、残り3分を報告に使うと良かったです。試験室内にいる試験管が指導医役なので、試験管の所へ移動し報告をします。
報告(プレゼン)の型については後述します。
報告が終了すれば、そのまま終了のアナウンスを待ちます。試験管から質問やフィードバックはありません。報告途中でアナウンスが鳴ってしまったら、「〇〇を考えており、△△が必要だと思います」と結論だけは言ってしまった方が良いと思います。
報告終了のアナウンスと同時に退出するよう指示されるので、その部屋にいる方々に「ありがとうございました。失礼します」と言って退出し、次の症例を行う部屋へ向かいます。
以上が具体的な流れです。
鑑別編 Post CC OSCE 対策
いきなり鑑別疾患を上げずにカテゴリから考えていくのがコツでした。主なカテゴリは臓器と病態の2つです。鑑別対象となる臓器や病態のことをそれぞれ鑑別臓器、鑑別病態と呼ぶことにします。
最初に、主訴を聞いたら、鑑別臓器を特定するようにしました。鑑別臓器が特定しにくい場合は鑑別病態を使ってアプローチしました。
全身症状系(全身倦怠感や体重変化など)の症候を除けば、基本的に鑑別臓器は特定できると考えて良かったです。
~鑑別臓器が特定できる症候(全身症候系以外)の場合~
症候を聞いた時、鑑別臓器を列挙できるように練習しました(詳しくは各論がお勧め)。
例えば、頭痛であれば、脳(Head)、目(Eye)、鼻(Nose=副鼻腔)など、呼吸困難であれば、心臓、肺、血液など、腹痛であれば心臓、消化管、肝・胆・膵、泌尿器、生殖器などを考えられるように練習します。
頭(HEENT)、胸(心・肺)、腹(消化管、肝・胆・膵)、骨盤(泌尿・生殖器)、四肢(皮膚・筋骨格)と一通り考えて鑑別臓器をピックアップします(系統的に臓器を列挙する方法を知りたい場合は#3解剖学的アプローチがお勧め)。
練習して症候を聞いた時に鑑別臓器を挙げられるようになったら、症候+鑑別臓器を考えて、
頭痛+脳=くも膜下出血や片頭痛など
頭痛+目=緑内障、側頭動脈炎など
頭痛+鼻(副鼻腔)=副鼻腔炎など
というようにコアカリの表を参考にしながら鑑別疾患を系統的・網羅的に挙げる練習をすると効果的でした。
~鑑別臓器が特定しにくい症候(全身症候系)の場合~
上記と同様に全身倦怠感の鑑別臓器を挙げてみてください。鑑別臓器はどこかと考えても直感的に答えを出しにくくないでしょうか?少なくとも僕にとっては出しにくいという印象でした。
全身症状とは何かを自分なりに考えてみると、血を介して全身に悪影響が出ている症候だと思い至ったため、全身症状に関しては病態からアプローチするようにしました。
全身症候に対しアプローチするため、まずは鑑別病態を列挙できるように練習しました(詳しくはPost CC OSCE対策#4病態アプローチがお勧め)。
鑑別病態はVINDICATE P2という病態(英語)の頭文字をとって並べた有名なゴロを覚え、列挙できるようにしました。
Vascular(心血管)
Infection(感染)
Neoplasm(腫瘍・血液疾患)
Drug(薬剤性・中毒・離脱・依存)
Immune=(自己)免疫・アレルギー・血管炎
Congenital(先天性)
Anatomy(皮膚・筋骨格)
Trauma(外傷・異物)
Endocrine(代謝・栄養+内分泌・電解質)
Psych(精神)
Pregnancy(産婦人科)
最初は覚えるのが大変ですが、研修医になってからも使える有用なもので、いつかは覚えた方が良いものではあると思うので、Post CC OSCEをきっかけに覚えてしまうことを強くお勧めします。
※本家を僕の考え方に馴染むよう自分なりにアレンジしたものを紹介しているので、注意してください。本家を知りたい人はこちらのサイトを参考にしてください。
全身倦怠感でこのゴロを使うと、症候+鑑別病態を考えて、
全身倦怠感+Vascular(心血管)=心不全など
全身倦怠感+Infection(感染)=結核
全身倦怠感+Neoplasm(腫瘍・血液疾患)=悪性腫瘍全般、貧血
全身倦怠感+Drug(薬剤性・中毒・依存)=薬剤性
全身倦怠感+Immune(免アレ・血管炎)=(オスキー的には)該当なし
全身倦怠感+Congenital(先天性)=該当なし
全身倦怠感+Anatomy(皮膚・筋骨格・関節)=該当なし
全身倦怠感+Trauma(外傷・異物)=熱中症(暑さによる外傷と広義に解釈)
全身倦怠感+Endocrine(代謝・栄養・内分泌・電解質)=甲状腺機能異常
全身倦怠感+Psych(精神)=うつ病
全身倦怠感+Pregnancy(産婦人科)=更年期
このように鑑別疾患を系統的・網羅的に挙げる練習をすると効率的でした。
~さらに完成度を高めるために~
上記2つのアプローチでは、Post CC OSCE で覚えておくべき鑑別疾患を全てカバーすることは難しかったです。例えば、黄疸や腹部膨満の鑑別を考えてみましょう。カバーするのが難しい疾患があったり、上記2つのアプローチではうまく行かないことに気づきます。
このような事態を避けるためにいくつかの補足をしていきます。補足後の結論を先に提示すると以下のチャートになります。以下で紹介する考え方を知っていれば自然とチャートのような方針になるので、特に覚える必要はないです。
原因カテゴリという言葉や、このチャートだけでは何が目的なのかよく分からない所があると思うので、以下で詳しく紹介していきます。
余談です。8割程度鑑別が分かれば良いと思う人もいると思いますが、個人的にはPost CC OSCEの鑑別疾患を全て覚えておくことはリスクヘッジとして重要だと思います。指導医に報告をする時、正解の鑑別疾患を(そもそも疑えていなくて)報告できていない人が落ちていることが多い印象だったからです(鑑別を外すと落ちやすいのか、正解を鑑別に上げることもできないような診察だったから落ちたのかどうかは分かりませんが)。鑑別疾患を全て覚えていれば消去法で対応することもでき、リスクヘッジになります。
〜原因カテゴリとは〜
例えば、主訴が黄疸だった場合、Post CC OSCE対策的には溶血カテゴリ、胆道系カテゴリの2つの原因カテゴリから考え始めると良かったです。原因カテゴリとは、溶血、胆道系のような、症状の原因となる臓器や病態とは別のカテゴリのことです。原因カテゴリの考え方は各論で紹介します。
臓器・病態カテゴリの2つを使って練習していると、溶血のような症候特有のカテゴリの疾患が鑑別から漏れがちだったため、これをカバーする目的で原因カテゴリを補足しました。
練習してみると、臓器・病態カテゴリから考えるより、原因カテゴリから考えた方がアプローチがしやすい症候があることがわかったため、まず原因カテゴリが想定できる症候かどうかから考えるようにしています。
原因カテゴリを想定できた場合、カテゴリごとに生じそうな症状を聞いて診断にせまります。例えば、黄疸であれば溶血と胆道系が原因なので、血液症状、肝・胆・膵症状、鑑別疾患特異的な症状などを聞きます。血液症状や肝・胆・膵症状などはある程度決まっているので、臓器・病態の問診セットを必要に応じて利用すると良いです。
他にも、主訴が腹部膨隆の場合、その原因として固体・液体・気体による3つのカテゴリから考えることが具体例として挙げられます。
原因カテゴリのメリットは、
- 鑑別臓器や鑑別病態を型通り考えても、思いつくことのできないカテゴリ(黄疸の例なら溶血カテゴリ)を挙げられる
- 鑑別臓器や鑑別病態を型通り考えるより、自然に・スムーズに鑑別・問診ができる(具体例が必要なら黄疸の記事を参照してみてください)
このようなメリットがあるため原因カテゴリを思いついた場合、原因カテゴリから優先的に考えます。
原因カテゴリを思いつかない場合、鑑別臓器や鑑別病態を型通り考えれば良いです(臓器・病態から考えにくいカテゴリに属する鑑別疾患を漏らすリスクが多少ありますが・・・(黄疸であれば溶血疾患など))
原因カテゴリを思いつくとアプローチが楽になります。難しい話をなるべく避けて直感的に原因カテゴリを挙げられるように、考え方を各論で紹介しています。参考にしてみてください。
以下では、原因カテゴリを思いつかなかった/そもそも想定しにくい症候であった場合について紹介していきます。
概略として、
- 全身症候の場合は病態からアプローチする
- 鑑別臓器からアプローチできる(=全身症候でない)場合、症状+鑑別臓器+鑑別病態の組み合わせを考えることで鑑別疾患をより多く挙げられるようにする
- 鑑別臓器が多い場合は上記のアプローチは現実的でないため、3つのコツ(以下で紹介)を利用しながら直感的に臓器ごとに鑑別疾患を挙げる。
~鑑別臓器が特定できる(全身症候以外) かつ 鑑別臓器が少ない場合~
呼吸困難で鑑別臓器を挙げると、Post CC OSCEでは肺、心臓、血液の3つしかありません。これでは、呼吸困難+肺=肺炎、呼吸困難+心臓=心不全、呼吸困難+血液=貧血の3つしか鑑別疾患が思いつかないという事態が生じるのではないかと不安になりました。
このような事態を回避するために鑑別病態も組み合わせて、症候+鑑別臓器+鑑別病態を考えることがお勧めでした。鑑別臓器が3ー4個以下の場合は少ないと考えて良いと思います。
全ての鑑別臓器について症状+臓器+病態の3つの足し算をすることが鑑別を挙げる上での理想ですが、同時並行で問診しなければいけないことを考えると現実的ではありません。解決策として特に鑑別疾患が多くなりそうな臓器を1つをメインに選んで3つの足し算をするようにしました。
例えば、呼吸困難では、肺が多そうなので肺をメインに考えます(あくまでメインです。呼吸困難+Infectionで心筋炎を思いつくこともあります)
呼吸困難+肺+Vascular(心血管)=PE、心不全
呼吸困難+肺+Infection(感染)=肺炎、結核
呼吸困難+肺+Neoplasm(腫瘍・血液疾患)=肺癌、貧血
呼吸困難+肺+Drug(薬剤性・中毒・離脱・依存)=間質性肺炎
呼吸困難+肺+Immune(自己免疫・アレルギー・血管炎)=自己免疫などによる間質性肺炎
呼吸困難+肺+Congenital(先天性)=(PCC OSCE 的には)該当なし
呼吸困難+肺+Anatomy(皮膚・筋骨格)=該当なし
呼吸困難+肺+Trauma(外傷・異物)=気胸
呼吸困難+肺+Endocrine(代謝・栄養+内分泌・電解質)=該当なし
呼吸困難+肺+Psych(精神)=パニック障害
呼吸困難+肺+Pregnancy(産婦人科)=該当なし
症状+臓器だけのアプローチであれば、呼吸困難+肺=肺炎しか思いつかない事態は十分あり得ますが、ここに鑑別病態を加えれば、さらに多くの鑑別を系統的に考えられることが分かります。(詳しくはPCC OSCE対策#6主訴×解剖×病態アプローチ部分の具体的な勉強法がお勧め)
残りの鑑別臓器については、症状+鑑別臓器で直感的に鑑別を挙げていけば十分なことが多かったです(心臓+呼吸困難=心筋梗塞、血液+呼吸困難=貧血など)
しかし、このようにPost CC OSCEの対策をしているとある問題が生じました。症候+鑑別臓器+鑑別病態を考えても想起しにくい疾患があったのです。上記の呼吸困難の鑑別リストには重要な疾患が抜けているのですが、お気づきでしょうか?
喘息やCOPDです。これらの疾患は実際に考えてもらうと実感できると思いますが、いずれの式にも直感的に当てはめにくく、鑑別疾患として漏れてしまうことがありました。そこで臓器固有疾患という疾患群(セット)の概念を作ってこれを克服しました。
練習して症状+臓器+病態を考えても想起しにくい疾患を見つけた場合、その疾患を臓器固有疾患と定義・分類して、その臓器が鑑別に挙がった時点で考えるようにします。
例えば、喘息・COPDは肺の臓器固有疾患と分類して、次からは3つの足し算をする前に肺が鑑別臓器に挙がった時点で喘息・COPDを真っ先に考えるように練習することがお勧めです。ルーズリーフを用意して、臓器固有疾患を蓄積していくと良いかもしれません。
ちなみにアプローチ方法さえ習得してしまえば、Post CC OSCEで覚える必要性のある鑑別疾患のほとんどは、実は臓器固有疾患になります。呼吸困難+肺+感染=肺炎など、3つの足し算で挙げられる疾患は覚える必要がほぼないからです。
まとめると、以下の流れになります。
- 原因カテゴリがない/思いつかない場合は全身症候かどうかを判断する
- 全身症候ではない=鑑別臓器が特定できる症候だと判断すれば鑑別臓器をピックアップ
- ピックアップした鑑別臓器の臓器固有疾患をまず考える
- ピックアップした鑑別臓器が少ない(3個以下)なら、鑑別疾患を増やすため、症状+鑑別臓器+鑑別病態から鑑別疾患を考える(鑑別臓器には最も鑑別疾患を多く想起できそうな臓器をメインに選ぶ)
- 症状+鑑別臓器から残りの鑑別疾患を考える
上記の流れで鑑別疾患を列挙できるよう練習すると効率的でした。
~鑑別臓器を特定できる症候(全身症候以外) かつ 鑑別臓器が多い場合~
基本的には症候+臓器で鑑別疾患を直感的に1ー2個挙げます。
鑑別病態を組み合わせることはしません。実際にやってみると分かりますが、鑑別臓器ごとに症状+臓器+病態を考えながら医療面接することは現実的でないからです。
直感的に鑑別を挙げる時のコツは、以下の3つです。
・臓器固有疾患を挙げること(肺なら喘息・COPDなど)
・臓器名に~炎や~癌と安直につけてしまうこと(肺なら肺炎・胸膜炎、肺癌など)
・突然発症で命に関わる「詰まる・捻れる・破れる」疾患を挙げること(肺ならPE、気胸など)
例えば、腹痛では多くの鑑別臓器が挙がるので、腹痛+心臓=心筋梗塞(詰まる疾患)、腹痛+胃=胃潰瘍(胃の臓器固有疾患)、腹痛+小腸=胃腸炎(炎をつける)、腹痛+大腸=大腸癌による腸閉塞(癌をつける)というイメージです。
他にも知っておくと便利な様々なTipsをPost CC OSCE対策#5鑑別疾患・臓器固有疾患を挙げやすくするコツ集で紹介しているので、さらに詳しく知りたい人は目を通してみてください。
まとめると、以下の流れになります。
- 原因カテゴリがない/思いつかない場合は全身症候かどうかを判断する
- 全身症候ではない=鑑別臓器が特定できる症候だと判断すれば鑑別臓器をピックアップ
- ピックアップした鑑別臓器の臓器固有疾患をまず考える
- ピックアップした鑑別臓器が多い(4個以上)なら、症状+鑑別臓器から直感的に考える(この時、コツ3つを意識する)
このような流れで鑑別疾患を列挙できるよう練習しました。
~鑑別臓器が特定しにくい症候(全身症候)の場合~
基本的には症候+病態で鑑別疾患を直感的に1ー2個挙げます。鑑別臓器を組み合わせることはしません(上述のように医療面接と並行するのは難しいから)
直感的に鑑別を挙げる時のコツは、上述の3つです。
さらに、セットを作っておくと良いです。
具体的には、Vascularで心不全を挙げた時、心不全を鑑別に挙げたなら、COPD(肺不全)、肝不全(前段階の肝硬変、肝機能異常含む)、腎不全もセットで挙げるようにするということです(「心肺が肝腎」と覚え、調子が悪い系の症候ではこのセットを使います)。
こうすることで、症候+病態=全身倦怠感+V=心不全を考えた時点で心不全のセットを展開し、肝機能障害、腎不全を鑑別に挙げられるようになります。臓器固有疾患と同様、メモ帳などに自分なりの疾患セットを蓄積していくと良いと思います。
まとめると、
- 原因カテゴリがない/思いつかない場合は全身症候かどうかを判断する
- 全身症候系である=鑑別臓器を特定しにくいと判断すれば鑑別病態からアプローチ
- 症候+病態で直感的に鑑別疾患を挙げていく(この時、コツ3つとセットを利用)
このような流れで鑑別疾患を列挙できるよう練習しました。
臓器固有疾患やセットなどをどう自分で作れば良いかよく分からない場合は、各論にある37症候のうちいくつかを読んで、参考にしてもらえればと思います。
鑑別編 Post CC OSCE 勉強方法のまとめ
まとめとしてもう一度、大枠の思考回路をチャートで示します(細かい所は省略あり)
・原因カテゴリが思いつければラッキー。思いつかないなら臓器と病態で考える。
・全身症状なら病態から考える(臓器を想定しにくいから)
・全身症状でないなら臓器から考える(臓器を想定しやすいから)
・鑑別臓器が少ない場合は鑑別疾患が少なくなってしまう可能性があるので、病態も加えて考える
・鑑別臓器が多い場合は病態も考えると思考量が莫大になって現実的ではない→症状+臓器で考える
・症状+臓器+病態で鑑別に挙げることが難しい疾患がある。このような疾患(臓器固有疾患)は忘れやすいので、その臓器を考えた時点でまず考える。その後に3つの足し算する。
・コツ3つとセットはよく使うので覚えておく
上記の箇条書きとチャートを見比べて整理してみてください。
詳しくは37症候の一覧ページで紹介しますが、症候を全身症候、痛い系、神経症候、その他症候の4つに分類するとチャートの流れをイメージしやすいです。
チャートで、全身症候なら病態からスタート、痛い系や神経症候は鑑別臓器からスタート(神経症候は鑑別臓器の挙げ方が特殊という違いがあるだけ)、その他症候は原因カテゴリからスタートさせると良いことが多いです。
チャートに示す思考回路で鑑別カテゴリ・鑑別疾患を挙げたら、それをどう問診に活用するかについて、「症状の有無の問診」のパートで紹介します。このパートは唯一型がないパートで問診の山場になると思います。そのほかのパートは型があるので比較的簡単です。
問診編 Post CC OSCE対策
問診は、症状と時間のグラフを書くための問診、症状の有無を知る問診、既往系の問診、心配事・まとめの4つのパートに分類して理解するのがお勧めです(もちろん、最初に自己紹介、患者確認、今日はどうされましたか?⇨詳しく教えてくださいを聞いてからの話です)
症状と時間のグラフを書くための問診
時間経過のグラフを書くための問診はOPQRSTなど馴染みのあるゴロを使って、横軸を時間、縦軸を症状の強さにしたグラフが書けるように問診します。言い換えれば、患者さんの病歴を映像として再現(実写化)できるように問診します。個人的にはOPD~というゴロが有用でした。
覚えたゴロの問診項目を全て聞く時間はありません。痛い系の症候ではゴロのほぼ全ての項目を聞きますが、それ以外では重要そうなものをかいつまんで聞きます。どの項目が重要か知りたい時は、#7の記事を参考になぜその問診が必要かを考えてみてください。
時間経過の問診の主な目的は鑑別疾患を絞ること・危険度を評価することだと考えています(もちろん、他にもありますが)。
例えば、急性の中でも突然発症なら詰まる・捻れる・破れる病態であることが多く、緊急対応が必要なので、急性なのか突然なのかを区別できるよう問診する必要があります。
(例外はありますが)一般に症状が出てはなくなることを繰り返すような慢性症候の場合、可逆なので機能性の疾患が多いです。器質性の慢性症候であれば症状がなくなることは稀(膵臓癌で腹痛なら癌がずっと神経に触ってるのでずっと痛い+基本的に増悪傾向となるグラフが問診から書けるはず)です。この意味で増悪しているか、ずっと続いているか、症状がない時間はあるかなどが重要です。
このようになぜその問診が重要なのかを Post CC OSCE対策#7時間経過のグラフを書くための問診 で紹介しているので参考にしてみてください(OPD〜など問診項目を覚えるためのゴロも紹介しています)
OPQRSTやOPD〜など問診項目をゴロで覚えることが最低限やると良いことだと思います。余裕があればその問診がどう活用できるのかも押さえておくと良かったです。
症状の有無を知る問診
症状の問診の主な目的は、鑑別臓器・病態を絞ることです。鑑別セクションで挙げた鑑別臓器・病態をもとに問診を行います。具体的には、鑑別臓器の臓器症状を聞く、鑑別病態でみられる症状を聞くということをします。唯一ゴロ(型)がない問診で医療面接の山場です。
具体例を挙げると呼吸困難であれば、心臓、肺、血液が鑑別臓器なので、以下のように臓器症状を聞きます。
循環器症状(心臓)⇨胸痛、動悸・息切れ・めまい(失神)、起坐呼吸、浮腫など
呼吸器症状(肺)⇨咳・痰、血痰・喀血など
血液症状⇨全身倦怠感、リンパ節腫脹、労作時に息切れしやすいなど
全身倦怠感であれば、鑑別に挙がる病態で生じる症状を問診します(Congenital=先天性など鑑別に挙がらない病態の症状の問診はしない)
Vascular(心血管)⇨胸痛、動悸・息切れ・めまい(失神)、起坐呼吸、浮腫など
Infection(感染)⇨発熱、同様の症状の人の有無、旅行・ペットなど
Neoplasm(腫瘍・血液)⇨健診、体重変化、食欲、リンパ節腫脹など
以下同様に続く・・・
臓器・病態ごとの症状(問診セット)を多少覚えておくことが最低限やると良いことです。完璧に覚える必要はありません。問診セットの具体的なイメージがつかない場合は、Post CC OSCE対策#8臓器・病態の問診セット を参考にしてみてください。
問診セットにある項目全てを問診する時間はありません。どの項目を問診するかは適当でも大丈夫だと個人的に考えます。
適当だとコアカリの表にある問診項目を完璧に聞けないと思う方もいるかもしれませんが、少なくとも僕や友達は完璧に聞けていなくても合格していました。今後もそれで合格できると断言はできませんが、系統的に臓器・病態を疑っていれば問診セットから適当に問診しても合格レベルに達する可能性が高いのだと考えます。
友達と練習してすべき問診項目の8割以上は聞けていることが多いなら、意識的に問診項目のうち何を聞くかを覚える必要性は低いと思っています。
既往に関する問診
既往に関する問診はOSCEでは基本的に作業です。個人的にはPAM~というゴロが有用だと感じたのでそれを覚えました。
既往系の項目を聞くために自分好みのゴロを覚えることが最低限やると良いことです。
PAM〜というゴロはPost CC OSCE対策#9既往の問診 を参考にしてみてください。
心配事とまとめ
心配事について、何が心配なのか、日常生活にどのような影響が出て困っているから来たのかなどを聞きます。
問診フェーズが終わるのに鑑別疾患が分からない、鑑別臓器・病態すら見当がつかない場合は、心配事のフェーズで必ず模擬患者さんに「何か思い当たる節はありますか?」と聞きます。診断につながるヒントをもらえることがあります(受験者が困っている場合は助け舟を出してくれることがあるという噂を聞いたことがあります。順調だとミスリードが来るという噂もセットでしたが・・・)
例えば、腹痛でアニサキスは鑑別として忘れやすいですが、思い当たるものを話してもらえば刺身という回答が来る可能性は高く、このヒントがあると診断に至るハードルは下がります。
まとめは簡単に患者さんのこれまでの話を簡単にまとめます。個人的には、グラフを書くための問診項目のうち3ー4項目程度をかいつまむ+心配事を折り込むでさらっと終わらせるようにしました。返答が曖昧で確認したいことがあればここで確認しますが、特になければ(試験的には)簡単にでもまとめを行なったという事実を作って次に進みます。以下に例を示します。
「簡単にまとめさせて頂きますと、コップを洗おうとした瞬間(Onset)にみぞおち(Location)が10段階で7くらい(Intensity)痛くなって、30分以上続いた(Duration)という理解で間違いはないですか?お父様が心筋梗塞ということもあって、心配だと思います。病気についてさらに調べるために次は身体診察をさせてください」
個人的にはこのように身体診察に繋げるのがお勧めです。
まとめと心配事では「かきかえ」というゴロを知っていると役に立つ時があるかもしれません。詳しくはPost CC OSCE対策#10まとめと心配事を参考にしてください。
問診編 Post CC OSCE 勉強方法のまとめ+問題点
・4つのパート(時間経過→症状→既往→心配事)の流れで問診することを覚える
・症状の問診以外⇨全て型がある問診なので型を覚える。
・症状の問診⇨①鑑別編の勉強法を実践して鑑別臓器・病態を挙げられるようにする⇨臓器・病態ごとの問診セットを多少は覚える(完璧でなくて良い)⇨セットから必要そうな項目を聞く
症状の問診について大枠の思考回路をチャートで示します(原因カテゴリは省略されています。原因カテゴリで生じる症状を問診すれば良いです=溶血カテゴリなら貧血症状など)
臓器・病態ごとの問診セットには疾患特異的な問診が含まれていないことには注意が必要です。例えば、消化器の問診セットにサバ・アジなど海鮮を食べたか?は含まれていないので、アニサキスが鑑別に挙がる症候では、海鮮物を聞くというように疾患特異的な問診は覚えておく必要があります。
身体診察編 Post CC OSCE対策
Post CC OSCEの身体診察では大まかに神経症候とそうでない症候の2種類です。
神経診察が必要な神経症候では、脳神経+MASTIR CAGI+特殊診察を覚えました。
脳神経は1-12までで必要な診察を行えるようにしておきます(OSCEと同じように診察できれば良いです)
MASTIR CAGIは、行う神経診察の英語の頭文字を並べたものです。
Motor:MMTで上腕二 / 三頭筋、大腿四頭筋・ハムストリングスを最低限評価。運動
Atrophy:手掌や四肢で視診。萎縮のこと
Sensation:ティシュで左右の顔、前腕、大腿・下腿を最低限評価。感覚
Tonus:腕や脚を曲げ伸ばしして抵抗を調べる。トーヌス
Involuntary movement:安静時振戦など視診で評価。不随意運動のこと
Reflex:上腕二 / 三頭筋、膝蓋腱、アキレス腱を最低限評価。反射のこと
Cerebellar:指鼻指やキラキラ星などあるが、すぐできるキラキラ星のみで大丈夫。小脳
Autonomic:起立時低血圧の測定。PCC OSCEでは避けても良いかも。自律神経のこと
Gait:転倒に注意しながら歩いてもらう。歩行のこと
Intelligence:意識障害の有無。TPP=Time,place,personについて正しく答えられるかやMMSEなどを評価。知能
このゴロを覚えてその中から必要な神経診察を選んでできるようにしておきます。必要な診察は自分が重要だと思うものから順番に時間と相談しながら行えば良いです(完璧である必要はなく、神経系の疾患を疑っていることが試験管に伝われば良いと思います)。
特殊診察はバレー徴候・バビンスキー、項部硬直・Jolt accentuation・ケルニッヒ、ロンベルグなどのことで、人の名前がつくものが多いです。脳神経診察でもMASTIR CAGIでもない神経診察は特殊診察に分類して、必要な診察ができるようにしておきます。特殊診察として項部硬直系はとても重要なので絶対に覚えておくことをお勧めします。
脳神経+MASTIR CAGIはスクリーニング的性格が強いです。特殊診察は疾患を疑ってとりに行く必要があり、忘れやすいので注意が必要です。
神経診察が不要な症候の場合、頭の先からつま先まで順番に見ていけば良いです(一般診察)。
Head:圧痛の有無など
Eye:瞳孔の大きさ・左右差・対光反射、眼球結膜の貧血・充血・黄染など
Ear:外耳の皮疹、鼓膜の発赤・腫脹など
Nose(Sinus):副鼻腔の圧痛・叩打痛など
Throat:咽頭・扁桃の発赤・腫脹・白苔の付着など
頸部:頸部リンパ節腫脹、甲状腺の腫大・結節・圧痛、JVD(頸静脈怒張)
心臓:心音(I音、II音、収縮期・拡張期雑音、3音、4音)
肺:肺音(両側清で左右差なし、Coarse/fine crackle、Wheeze/Rhonchi)、胸部の皮疹
腹部診察:平坦・軟・手術痕、腸蠕動音の亢進・減弱、鼓音・濁音、圧痛・マックバーニー・筋性防御・反跳痛、腫瘤触知、肝脾腫・肝叩打痛・マーフィー
CVA knock pain:CVA knock painの有無
下肢:下腿浮腫・把握痛・発赤、拍動など
よく使う診察(太字)とよく使う所見を示しました。フルバージョンは、Post CC OSCE対策#12それ以外の一般診察を参考にしてください。
症候や残り時間に応じて適当に削ったり、必要な診察を増やします(脊柱叩打痛、関節触診・ROMなど)。時間がない場合は、重要な診察を選んで優先順位をつけて行います。例えば、心筋梗塞を疑うなら、心音・肺音⇨座位で見つかるほどの頸静脈怒張⇨冷汗⇨下腿浮腫を時間の許す限り進めます。
疾患を疑ってとりに行く特殊診察(一般診察に該当しない診察)は忘れやすいので意識的に覚えておく必要があります。側頭動脈の触診、DRE、婦人科診察、SLRテスト、ファーレン・ティネルなど。
身体診察編 Post CC OSCE 対策のまとめ
身体診察は、最初に手指消毒して、意識レベル・バイタル・全身の外観の3つを述べてから始めること、毎回今から何をするか患者さんに話してから診察すること、正常でも異常でも所見を述べることを忘れないようにしましょう。
・神経症候⇨脳神経+MASTIR CAGI+特殊診察
・神経症候ではない⇨頭の先から爪先まで身体診察(一般診察)+特殊診察
さらに詳しく知りたい時はPost CC OSCE対策#11神経系、Post CC OSCE対策#12それ以外の一般診察を参考にしてみてください
メモ・プレゼン編 Post CC OSCE対策
プレゼンは医療面接の流れ・メモに沿って要点をレビューしていくようなイメージでやれば、自然と型ができるので、前半部分は問題ないです。イメージしやすいように以下にメモとプレゼン例を示しておきます。プレゼンはメモと比較しながらどうぞ。
メモは、左上に患者情報、主訴、グラフの問診+左下に症状の有無+右上に既往+右下に身体所見、鑑別、検査を書きます。鑑別疾患はこれだと思った時点で書きましょう。診察しているうちにこれだと思った疾患を忘れて迷宮入りすることがあるからです。
患者確認⇨「よろしくお願いします。〇〇さん、●歳、男性です。」
今日はどうされましたか?⇨主訴は胸痛です。
詳しく教えてください・グラフの問診⇨現病歴ですが、(Onset)今日の朝9時に発症し、(Progression)増悪傾向で、(Duration)30分持続しています。(Setting)皿を取ろうとした瞬間に突然、(Location)心窩部が、(Intensity)10段階で7程度痛み出したということです。(Quality)象にふまれてるような痛みで、(Radiation)肩への放散痛があり、(Simmilar episode)以前から労作時の胸痛を認めていました。
症状の問診⇨循環器症状として、動悸や冷汗は認めますが、浮腫や失神は認めません。呼吸困難は認めますが、吸気時の疼痛、咳・痰など呼吸器症状はありません。嘔気はありますが、嘔吐はなく、その他下痢・便秘、黒色便など消化器症状はありません。皮疹はないそうです。先行感染もありません。
既往系の問診⇨(Past medical history)既往に5年来の糖尿病があり、(Allergy)アレルギーはありません。(Medication)3年前から糖尿病の薬を内服しています。(Family history)家族歴は父が70歳で心筋梗塞で亡くなっており、母は80歳で脳卒中だそうです。(Alcohol)アルコールは飲みませんが、(Smoking)タバコは20歳から1日10本です。
まとめ・心配事⇨父のように心筋梗塞で死ぬのではないかと心配しています。
バイタル・身体診察⇨意識は清明ですが苦悶様の表情です。バイタルは血圧145/85、心拍数110、呼吸数20です。身体所見ですが、心音は整で、I音、II音を聴取し、収縮期雑音を認めます。拡張期雑音や3音・4音は認めませんでした。頸静脈の怒張はありません。肺音は両側でCoarse crackleを認めます。下腿浮腫は認めませんでした。(時間がなければ)その他、眼球結膜の診察、腹部診察で異常はありませんでした(のようにまとめる)。
医療面接で得た情報をプレゼンする時の主なポイントは、自分が何を疑っているのか分かるように医療面接で得た情報を取捨選択することです。心筋梗塞など心臓の病気を強く疑うなら上記のように心筋梗塞らしい病歴をしっかり述べます。疑いの低い肺や消化器、皮膚疾患は代表的な陰性所見をいくつか述べるに留めて、その他〇〇症状はありませんとまとめて大丈夫だと思います。
一文を短く話すこと、医学用語に置き換えて話す(メモする)こと、できるだけ時系列で話すことを意識できると聞きやすいプレゼンになります。一文に盛り込む要素は3つまでと意識しておくと良いです(上の例では、「今日の9時に発症+増悪傾向+30分持続」の3要素まで)
意識レベル・バイタルサインは患者さんの命に関わる重要な情報なのに忘れがちです。友人の話によると言い忘れたから不合格とはならないようですが、忘れないようにしましょう。
身体診察まで報告したら、最も考えられる疾患とその根拠を3つ前後挙げ、今後必要な検査・治療を話しました。時間に余裕があれば、他の鑑別疾患を挙げ、合わないところを話します。
最も考えられる疾患は心筋梗塞だと思います。根拠としては、糖尿病の既往と重喫煙歴のある高齢男性に突然発症の心窩部痛が生じていること、象に踏まれたような特徴的な痛みと肩への放散痛があること、収縮期雑音とCoarse crackleを認めることなどが挙げられます。
今後は心電図とトロポニン含む採血などの検査を行ない、治療として酸素投与、心臓カテーテルなどが必要だと思います。
(時間に余裕があれば)他に鑑別として、肺血栓塞栓症や大動脈解離などが鑑別に挙がりますが、PEは長期臥床の病歴やDVTを疑う所見がなかったこと、解離は血圧の左右差がなく痛みの性状や移動の仕方が非典型的であることから否定的だと思います。
以上です。ありがとうございました。
当然ですが、鑑別や検査・治療は完璧である必要はなく、CBTレベルの基本的な検査と治療が1つ以上言えれば十分だと個人的に思っています。
逆に完璧を目指すと時間内に終わらないので、細かいところは置いといて、大事なところから優先的に・忘れず伝えるという姿勢が大切だと思います(個人的に上の例では心筋梗塞なら心電図と心臓カテーテルと言えれば良いと思ってます)
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要点まとめとさらに詳しく知りたい場合について
長文でしたが、最後まで読んで頂きありがとうございます。お疲れ様でした。
長かった内容の要点をかなりざっくりまとめてしまうと以下のようになります。
- 鑑別疾患は原因カテゴリを考え、思いつかなければ臓器カテゴリ、病態カテゴリを挙げて、症状+臓器+病態で系統的に考える
- 型がない問診については、鑑別に挙がった臓器/病態カテゴリに対応する問診をしていく。疾患特異的な問診も追加する。
- 型がある問診についてはゴロで覚えて、必要だと思う項目を問診する
- 身体診察は鑑別に挙がっている臓器・病態カテゴリに対応する診察と疾患特異的な診察を行う
- 全体では、大きなカテゴリから考え始め、鑑別疾患に迫る。鑑別疾患から考え始めない。東西南北の方角を決めてから目的地へ行くイメージ。目的候補地を巡るやり方では系統的ではないため、目的地にたどり着かないかもしれない。
僕の勉強方法のコアコンセプトである「カテゴリから系統的に鑑別疾患に迫る」という言葉を参考にしてもらうことで、診察レベルが向上し、少しでもPost CC OSCE合格に近づけることを願っています
要点だけお伝えしているので、本当はこれも知っていると良いんだけどなぁということを省略しています。総論では、そのようなことも含めて詳しく書いているので、余裕があれば是非興味があるものを読んでみてください。系統立てて勉強していく場合は#2のPost CC OSCE勉強法の全体像から順番に読んでいくことをおすめします。総論は余裕があれば読むことがお勧めですが、各論は37症候のうちの数症候には目を通すことを強くお勧めします。この記事の内容を具体例を伴って理解してもらえると思うからです。
不完全な部分はもちろんあると思いますが、少しでもお役に立てればと僕の勉強法を紹介しました。参考になれば幸いです。