ステップ1の総復習〜実践的なPost CC OSCEの対策方法について詳しく紹介〜 #6

このページの最低限の目標

目標:症候の分類ごとに具体的な勉強法を実践できる

最低限の目標は以下のステップを押さえると達成できるように紹介していきます。

細かいと感じたところはスルーして太字だけ読んでもらえれば大丈夫です。思考体系が大体理解できれば良いので・・・

(まず結論だけ知りたい方はページ一番下へ)

ステップ1:#3ー#5のメインテーマの復習

 #3解剖アプローチ(鑑別臓器の上げ方)、#4病態アプローチ(鑑別病態の挙げ方)、#5コツ集の要点をかいつまんで復習します。詳しく知りたい人はリンクをクリックしてください。

ステップ1ー1:解剖アプローチに関する要点の復習

#3解剖アプローチとは、主訴から鑑別臓器を挙げることです

・解剖アプローチの具体的なやり方は、頭・胸・腹、骨盤、四肢のカテゴリからスタートし細分化すれば良いです。

頭=HEENT
胸=心血管・肺
腹=消化管+肝・胆・膵
骨盤=泌尿・生殖器(腎臓、男性器、女性器、乳房)
四肢=皮膚・筋・骨格・関節

・解剖アプローチを使って、主訴に関係のある臓器(=鑑別臓器)を考えられるようになることがこの記事の目標でした。

ステップ1ー2:病態アプローチ・臓器固有疾患に関する要点の復習

#4病態アプローチとは、主訴から鑑別病態を挙げることです

・病態アプローチの具体的なやり方は、例えばVINDICATE P2という病態カテゴリ列挙のためのゴロを使うなどして、病態カテゴリ(鑑別病態)を列挙できるようにすると良いです。
 VINDICATE P2が分からない場合は病態アプローチの記事を読むことをお勧めします。

・病態アプローチの具体的な活用法は2通りに分類できます。
局在が乏しい症候の場合:病態アプローチをメインで使って鑑別疾患を挙げる
局在がある症候の場合:解剖アプローチ後に病態アプローチを加えて鑑別疾患を挙げる

臓器固有疾患群とは、症状+臓器+病態を考えても鑑別に挙げにくい疾患のことです。臓器固有疾患群は解剖アプローチの段階で挙げられるように意識的に覚える必要があります。腹痛+胃+VINDICATE P2を考えても胃潰瘍を鑑別に挙げにくいので胃潰瘍は胃の臓器固有疾患です。

鑑別疾患のセットとは、症状が似ているなどある種の枠組みに基づいて鑑別疾患をグループ化したものです。セットを多く作っておくと鑑別のバックアップや問診に役に立ちます。

ステップ1ー3:#5鑑別疾患を挙げる具体的なコツに関する要点の復習

・臓器固有疾患(解剖カテゴリ)と病態カテゴリを考えてから鑑別疾患を挙げるには、それぞれにコツがあります。

・臓器固有疾患(解剖カテゴリ)で鑑別疾患を考えるコツは4つ

コツ1:構造異常と機能異常で大雑把に分類して想起する
コツ2:構造異常では、「詰まる・捻れる・破れる」、変形などを主なカテゴリとして考える、解剖部位名に症をとってつける。
コツ3:機能異常では、機能から考える、亢進・低下を主なカテゴリとして考える
コツ4:必要に応じて疾患名に修飾語をつける

・病態カテゴリのコツは多岐に渡りますが、よく使うものを厳選すると以下に示すものになります

#心血管カテゴリ
・心不全、呼吸不全、肝不全、腎不全をセットで考える(=不全系セットと呼ぶ。心肺が肝腎と覚える)
・身体の調子が悪い場合(全身倦怠感・食欲低下など)に不全系セットを鑑別に挙げる

#感染カテゴリ
・鑑別臓器名にとりあえず炎をつけてみる(肺炎など)。
・感染を疑う場合は、病原菌の種類を考える=細菌、ウイルス、結核、かび(真菌)、原虫+膿瘍。

#腫瘍・血液カテゴリ
・臓器名+癌・ポリープを考える(大腸癌・ポリープなど)
・原発・転移/悪性・良性をセットで鑑別(転移性脳腫瘍など)
・血液疾患は血液腫瘍と白血球・赤血球・血小板カテゴリから考える(赤・白・黄色)。

#薬剤性・中毒カテゴリ
・全身性・左右対称な症状か注意する。有毒物質を含んだ血が全身を巡って全身性・左右対称に悪さをするイメージ。内分泌もこのイメージは適用可。

#代謝・栄養・内分泌・電解質カテゴリ
・内分泌は甲状腺・副腎・膵臓をセットで考える

ステップ1ー4:鑑別の思考回路の復習

 鑑別疾患の考え方をまとめると以下のチャートのようになります。結局は症状+臓器+病態で考えれば問題はないのですが、これをすると医療面接を同時にこなせず実践応用できなかったので、以下のチャートのような場合分けをする思考回路に落ち着きました。

Post CC OSCE 鑑別疾患の思考回路を示すチャート

 原因カテゴリについて、例えば黄疸では、原因は「溶血」と「肝・胆・膵の異常でビリルビンを排出できない」の大きく2つのカテゴリだと考えることができます。このように、症状の原因となるカテゴリのことを原因カテゴリと言うことにします。
 原因カテゴリは症状固有なものが多く、鑑別臓器・鑑別病態のように毎回適切なカテゴリを考えることができないのが欠点ですが、思いつくことができればアプローチがしやすくなる事が大きなメリットです。

このチャートをもとに勉強方法の具体的な手順を紹介していきます。

ステップ2:勉強方法の具体的な手順について

 要点としては、「チャートのステップごとに何を覚える必要があるか明らかにしながら進むこと」です。

ステップ2−1:鑑別の具体的な勉強手順

 まず最初のステップにある原因カテゴリについて、原因カテゴリを想定できる症候とできない症候を見分けられるようにしました。
 見分けるために37症候を6つに分類しました。

  1. 痛い系(頭痛、腹痛、胸痛、腰背部痛、関節痛)
  2. 神経症状系(運動麻痺・筋力低下、嚥下障害・困難、めまい、物忘れ、意識障害、痙攣)
  3. 呼吸・循環器系((胸痛)、失神、(めまい)、動悸、浮腫、呼吸困難、咳・痰など)
  4. 消化器系((嚥下障害)、嘔気・嘔吐、吐血、脱水、(腹痛)、下痢、下血など)
  5. その他マイナー科症候(尿量の異常・排尿障害、血尿、月経異常、皮疹など)
  6. 全身症状系(発熱、全身倦怠感、食思不振、体重増加、体重減少)

 痛い系は鑑別臓器をメインで考えてアプローチします。
 神経症状系は神経解剖(大雑把には脳・脊髄・末梢神経・筋肉)をメインで考えてアプローチします
 全身症状系は鑑別病態をメインで考えてアプローチします。
 上記の3つの症候系では基本的に原因カテゴリを考えないです。逆に上記3つ以外の症候系では原因カテゴリを考えることが多いです。
 この判断がつくようにしました。

 原因カテゴリを考え出せる3つの症候系の場合、原因カテゴリを思いつけるようにしました。どう原因カテゴリを思いつけば良いかについては、各論で直感的に理解しやすいよう考え方を紹介しているので、そちらを参考にしてみてください。

・原因カテゴリのある3症候系の場合、症状+原因カテゴリで鑑別疾患を挙げます。必要なら症状+原因カテゴリ+臓器+病態で鑑別疾患を挙げます。
・全身症状系の場合、症状+病態で鑑別疾患を挙げます。
・痛い系の場合、症状+臓器+病態で鑑別疾患を挙げます。
・神経症状系の場合、症状+神経解剖部位+病態で鑑別疾患を挙げます。

 鑑別疾患を挙げたら、コアカリの表と自分の鑑別を見比べて何を覚えるべきか反省します。
 症状+原因+臓器+病態で挙げられる鑑別疾患を挙げられなかった場合、どのカテゴリを忘れやすいか、どの疾患を忘れやすいかを見つけ、忘れやすいものを集中的に覚えるようにしました。この時、似たような疾患はセットにすると良いです。また、練習しているうちにコツが見つかればそれを覚えておきます。僕が見つけたコツも紹介しているので参考にしてみてください。
 症状+原因+臓器+病態で挙げにくい鑑別疾患がある場合、この疾患は臓器固有疾患であると考えて臓器が鑑別に上がった時点で考えるようにします。例えば、呼吸困難+肺+VINDICATE P2で喘息やCOPDなどを挙げるのは難しいので、これらを肺の臓器固有疾患と分類し、次回からは肺が鑑別臓器に上がった時はまず喘息・COPDを考えるようにするということです。
 臓器固有疾患はパソコンやルーズリーフにまとめておくと良いです。

 鑑別カテゴリ⇨鑑別疾患ができるようになったら、問診の練習をしていきます。

ステップ2−2:問診の具体的な勉強手順

 まず、鑑別カテゴリに対応する問診ができるようにします。
 鑑別臓器を挙げた場合、臓器症状を聞けるようにします。鑑別病態を挙げた場合は鑑別病態で見られる症状を聞けるようにします。臓器・病態症状を聞けるようにするには、臓器・病態の問診セットの記事を参考にしてみてください。この記事に書いてある各項目を完璧に覚えておく必要はあまりないので、一度目を通してなんとなく聞けるような状態にしておけば大丈夫です。
 疾患特異的な問診は実践練習を通してコアカリを参考に何を聞けば良いか学ぶので特に対策は不要です。

 次に、詳しく教えてくださいの後に聞く発症様式など症状と時間経過のグラフを書くための問診をするためのゴロを覚えます。OPQRSTが一般的ですが、個人的にはOPD~というゴロを覚えることがお勧めでした。
 余裕があればゴロを覚えるだけでなく、なぜその問診が必要かも知っておくとゴロの中から必要な問診項目を選びやすくなり、コアカリの表が自然と埋まるようになります。

 最後に、既往の問診ができるようにゴロを覚えます。ゴロの中から必要な問診をするためによく使う問診項目がどれなのかコアカリや僕の記事も参考にしながら見当をつけておくのがお勧めです。

 余裕があれば、まとめと心配事の記事を読んでどんな聞き方があるのか参考にしてみてください。自分の手札は多い方が良いと思います。

ステップ2−3:身体診察の具体的な勉強手順

 まず、身体診察は神経診察とそれ以外(一般診察)の2つに分類します。

 神経診察では、脳神経+MASTIR CAGI+特殊診察の3つをまず覚えて、どんな身体診察をするかはこの3カテゴリから必要なものを選べば良いだけにします。3カテゴリの詳しい紹介やよく使う診察項目・所見について神経診察の記事で紹介しているので参考にしてください。
 すべき身体診察を考えられるようになったら、実際にその診察ができるように練習します。これは4年生の時のOSCEと同じです。

 一般診察では、頭の先から爪先までルーティンで見ていく身体診察+鑑別疾患を狙った身体診察の2つを覚えて、どんな身体診察をするか選べば良いだけにします。ルーティンで行う診察項目やよく使う身体所見、鑑別疾患を狙った診察には何があるのかを一般診察の記事で紹介しています。参考にしてみてください。
 すべき身体診察を考えられるようになったら、実際にその診察ができるように練習します。

ステップ2−4:実践練習の具体的な勉強手順

 鑑別カテゴリが挙げられるようになり、問診・身体診察を一通り勉強したら友達と実践練習をします。実践レベルに思考回路が出来上がって系統的な診察ができるか、メモ・プレゼンをうまくできるかを確認することが目的です。
 実践練習の症例作成のポイントは3つです

・比較的典型的な現病歴・既往歴・身体診察所見が含まれていること(いくつかは陰性でも良い)
・バイタルは要求されたら伝えられるようにしておくこと
・メインの検査・治療を1ー2個調べてフィードバックできるようにしておくこと

 余裕があれば、鑑別がmost likely, likely, must rule outの3つ挙げられるような症例にできると良いですが、症例作りに力を入れすぎても効率が良くないので、かけても10分前後が望ましいと思います。

 実践練習の流れは以下の通りです

  • 患者呼び入れ(+必要な人は自分でタイマーをかける)
  • 自己紹介と患者確認
  • 主訴の確認
  • 詳しく教えてもらう
  • 時間経過と症状のグラフを書けるように問診
  • 鑑別カテゴリを挙げながら症状の有無について問診
  • 既往系項目について問診
  • まとめと心配事の問診     
    (ここまでを6分が目安)
  • 身体診察   (身体診察に5分〜6分弱)
  • 質問受付
  • 上級医に相談するので外でお待ちください。ありがとうございました。
    (ここまでを12分以内)
    医療面接の12分が終われば、すぐ4分でプレゼン
  • 最初の1分で身体診察で陽性の所見と重要な診察項目のみメモ+話すことを整理
  • 残りの3分でメモを見ながらプレゼン
  • 友達からフィードバック

 メモ・プレゼンについては、型をメモ・プレゼンの記事で紹介しているのでそちらを参考にしてみてください。
 フィードバックのポイントは、

  • most likelyがどの疾患のつもりで作ったか伝える
  • コアカリの表の鑑別が言えるかチェックする
  • コアカリの表にある問診・身体診察の項目で言い忘れていたものを伝える
  • メインの検査・治療がプレゼンできていない場合はフィードバックする
  • プレゼンの印象と問題点(後述)があればフィードバックする
  • コミュニケーション(アイコンタクトや思いやりある行動)ができていたと感じたか(医者役が意識していたかは問題ではなく、患者役が実際にどう感じたかの方が重要)
  • コアカリの表にない問診・身体診察が必要と思った場合は個人的な意見として参考までに紹介する
  • その他何か感じたことがあれば個人的な意見として参考までにフィードバックする

 実践練習をして鑑別では、鑑別カテゴリ・鑑別疾患を系統的・網羅的にコアカリの表にあるものを全て列挙できることが目指すレベルです。
 問診・身体診察では、コアカリの表が8割程度は埋まることを目指しました(8割に根拠はなく、個人的な意見です)
 メモは系統立てて取れていることを目指します。メモに沿って読んでいくだけで患者情報、主訴、現病歴、既往歴、身体所見とプレゼンできれば系統立てられていると考えます(鑑別疾患、検査・治療は時間的にメモなしでプレゼンできるようにしておいた方が無難だと思います)
 プレゼンは以下の項目が達成できることを目指します。

  • 全体として上述のように患者情報から検査・治療まで順番が守られていること
  • 現病歴は時系列順に構成し直されていること
  • 医学用語に変換されていること
  • 1文は短く理解しやすいこと
  • 要点を伝えられていること

 実践練習をして鑑別・問診・身体診察・メモ・プレゼンのどれかに問題があることが分かれば、その章に立ち返って知識を定着させ弱点をなくしていきました。
 勉強したら再び実践練習をするというように勉強と実践練習を繰り返して合格レベルを目指していきました。

以上になります。

次回の記事からはゴロを使いながら問診の項目を覚えていきます。

なぜその問診が重要かにも触れながら紹介するので、ぜひ読んでください。

勉強法の全体像を確認する

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