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失神のアプローチ方法、鑑別・問診・身体診察からメモの取り方・プレゼンまで紹介。要点まとめを読んでない場合は、こちらを読んでから37症候の記事を参考にすることを強くお勧めします
鑑別と問診は同時並行で行うので同じセクションにまとめました。
~呼吸・循環症状系のポイント~
・症候をきたす機序や原因をまず考えてみる。それに基づいた独自のカテゴライズをしたり、鑑別臓器を特定していく。追加でVINDICATE P2を考えてみる。疼痛系、神経症候、全身症候以外の症候は基本的にこの思考アルゴリズム。
・鑑別臓器が少ない場合は症状+臓器+病態で鑑別疾患を考えていく。鑑別臓器の臓器症状や鑑別病態の病態症状、鑑別疾患特異的な症状などを聞いて問診する。
・鑑別臓器が多い場合はある程度直感的に症状+臓器で鑑別疾患を数個挙げる。直感的に鑑別疾患を挙げる際はVascular, Infection, Neoplasmの3カテゴリを意識すると良い。鑑別臓器の臓器症状、鑑別疾患特異的な症状などを問診する。
・症状+臓器+病態を考えても思いつきにくい疾患があり、それを臓器固有疾患と定義する。肺であれば喘息・COPD・気胸など。心臓は弁膜症・心筋症、不整脈など。呼吸困難+肺+感染=肺炎など症状+臓器+病態で考えられる疾患は思いつきやすいためあまり覚える必要はないが、臓器固有疾患はノーヒントで思いつかないと出てこない疾患なので頑張って覚えておく必要がある。
※PCC OSCEのコアカリの表に記載のある項目(鑑別・問診・身体診察)には赤線が引いてあります。載っていない項目については引いてないので覚える必要はありませんが、学習の役に立つかもしれないので参考までに記載しました。
※鑑別疾患は全て挙げられるようにすることをお勧めしますが、問診・身体診察は8割程度の項目が埋まれば良いと個人的に考えます。
#失神
@鑑別・問診
・失神の原因は一過性に脳に十分な血流が供給されなくなるから。脳に血液を送る流れをイメージすると、「心臓から、血液を送って、必要に応じて神経が血管を閉めることで脳に十分な血流を送る」と考えることができる。よって、局在としては心臓、血液、神経の3つを考える。
・鑑別臓器が少ないので、鑑別疾患が最も多そうな心臓で症状+臓器+病態を考え、問診につなげていく。
・まずは型通り問診。オープニングを終わらせたら、詳しく教えてください⇨OPD系をかいつまんで聞く(疑う疾患で多少異なってくる。必要だと思ったものを聞いておけば良く、完璧を目指す必要はない)
・個人的にはOnset, Progression, Duration, Setting, Assosiated, Similar(Constant, Frequency, Location, Intensity, Quality, Radiation, AA, は基本不要)を聞く
・失神・痙攣・意識障害を区別できるように時間経過の問診をする
⇨てんかんを鑑別に挙げて、痙攣の有無、意識障害が遷延していないかなど聞く
・症状の有無の問診のフェーズで鑑別・問診を同時平行で考え始める
・心臓の臓器固有疾患は弁膜症(ASなど)、閉塞性肥大型心筋症、不整脈など
⇨胸痛、呼吸困難、家族歴、動悸や脈が飛ぶ感じなどがあるか聞く
・鑑別が少なく、心臓で最も鑑別疾患を挙げられそうなので、失神+心臓+VINDICATE P2を考える
失神+心臓+V=MI・PE・解離
⇨胸痛、背部痛、呼吸困難、冷汗など
失神+心臓+I=ー
失神+心臓+N=(腫瘍による)消化管出血
失神+心臓+D=ー
失神+心臓+I=ー
失神+心臓+C=ー
失神+心臓+A=ー
失神+心臓+T=ー
失神+心臓+E=ー
失神+心臓+P=ー
失神+心臓+P=ー
・最後に症状+臓器を考えて、
失神+血液=消化管出血
⇨消化管出血の原因として消化性潰瘍・消化管腫瘍を想定しながら、腹痛、下痢・便秘、便の色、健診について聞く
失神+神経=神経調節性失神
⇨立ち上がった時に意識を失ったのか(起立性低血圧)、ずっと立っている時や注射された時か(迷走神経反射)、排痰・食事・排便中に意識を失ったのか(状況失神)など疾患特異的な問診をする
・症状の有無の問診ができたら、既往系の問診をする
・既往はPAM系を聞く。どの症例でもPMH, Allergy, Meds, FH, Alcohol, Smoking, Occupationは最低限聞くと良い。女性の場合、月経・性交歴が必要かどうかは必ず考える(関節痛では基本不要)
・まとめと心配事を聞く。
※多めに書いてある。全て聞くのは時間的に厳しいので赤線を優先・疑う疾患を確かめるために必要な項目を聞く。個人的に赤線の項目が8割以上聞ければ良いと考える。
#鑑別・問診のTips
・意識を失った=LOC=Loss of concsiousnessといって来院した場合を考える。これでは失神なのか、痙攣して意識を失ったから来たのか区別がつかない。LOCがあった場合は痙攣したかどうかを確認する。LOCはその原因を探ると同時にLOCによる外傷を探すことを考えるので、LOCは内科・外科疾患の両方の顔があると覚えておくと診察に役立つ。
・失神、痙攣、意識障害は鑑別に迷うことがあるが、意識レベルに関するグラフが鑑別の一助になる。
・失神は意識を失って倒れると横になったおかげで血液が脳に届きやすくなり意識は正常に戻る。このため、意識は数分以内に回復しその後は意識清明なことが多い。LOCがあった時に基本的には痙攣しない。グラフは下にスパイクが入ったようなグラフ。ただし、失神した人を助けようと抱きかかえ外傷を防いだ後、親切に座らせてあげた場合、横になれないので脳に血が届かないままとなり、痙攣にまで進展すること=Syncopal seizureがあるので病歴は大事。
・痙攣は意識を失うと同時に四肢をガクガクさせ、目は上転、舌は側面を噛んで(舌先ではない)、尿失禁や便失禁をきたすことが多い(全身の筋肉が収縮するため)。四肢の運動がなく意識消失のみの場合もあり、失神と鑑別が難しいこともある。意識レベルはすぐに清明にならないことが多い。グラフは下にストンと下がってから緩やかに元のレベルまで上昇していくようなグラフとなる。
・意識障害ではグラフが緩やかに下降してそこから緩やかに上昇に転じたり、横ばいだったり、さらに下降して行ったりと様々なパターンがあり得る。痙攣後と鑑別が必要。
グラフを用意
・時間経過の問診で、LOCがあった場合はLOCの最中とLOCの前後というイメージで問診を進めると良い。LOCの最中に痙攣があったかどうか。なければ失神らしさがあると考える。LOCの前はどのような状況だったか、前兆となる症状はなかったか(鑑別は心臓・血液・神経なので胸痛や嘔気、消化管出血、起立時かなど必要な問診をする)、LOCの後はすぐに意識が戻ったかどうか、舌咬傷や失禁がなかったかでも痙攣との鑑別を行う。また、LOCは内科・外科疾患なのでLOCの後に外傷がないかも調べる。
・失神と聞いた時、心臓に異常⇨脳に十分な血液が送られない⇨一過性に意識消失のようなイメージを持っておくことがお勧め。失神で心臓の症状を考えやすくなるから。失神で心臓を見逃して帰すと次に会う時は心臓が止まった状態で運ばれてくるというフレーズは勉強しているとよくみるフレーズ。失神では心臓は必ず除外。
・失神の原因は一過性に脳に十分な血流が供給されなくなるから。脳に血液を送る流れをイメージすると、「心臓から、血液を送って、必要に応じて神経が血管を閉めることで脳に十分な血流を送る」と考えることができる。よって、局在としては心臓、血液、神経の3つを考える。
・ペットボトルのキャップを頭だと考えると、横向き(仰臥位)では十分な水がキャップ(頭)に送られるが、縦(立位)にするとキャップ(頭)に水が送られにくくなることが直感的に理解できる。キャップ(頭)に水を送るためにはペットボトルを握るか(神経が血管を締める)か水を増やす(循環血液量)必要がある。このイメージから失神の鑑別臓器3つを出せるようにする。
・寝転んでいる時に生じた失神は基本的には心臓のせい。血液や神経は寝転んでいる時には特に変化はないので、心臓に問題が生じたため失神したと考えられるから。
・運動している時に生じた失神は心臓らしさがある。HOCMやAS、MIなど
・血液や神経が鑑別に挙がるのは立ち上がる時に生じた失神。血液量と神経が血管を閉める運動が脳血流維持に重要だから。立ち上がる時の失神であっても心臓を除外することはできないので注意(立ち上がる時にMIなど生じた可能性を否定できないから)。他に血液や神経が鑑別に挙がるのは明らかな状況失神の場合。
・心臓の臓器固有疾患は構造と機能で考えると覚えやすい。構造は膜・心筋・弁を考える。膜の異常で失神は考えにくいので、心筋としてHOCM、弁としてASを考える。機能的にはポンプ機能の亢進・減弱を考えるので不整脈や徐脈疾患を考える。また、詰まる・捻れる・破れるなど器質異常としてMIを挙げ、PE・解離・AAAなどをセットで鑑別する。
・弁膜症ではA弁の狭窄がひどくなると十分な血流が脳に供給されなくなり失神するイメージを持つと良い
・閉塞性肥大型心筋症では画像のように左室流出路が狭窄している。このため心室から駆出する血液量が少ないと心室内の血液は狭窄部を抜けることができず失神につながる。逆に心臓に血液を充満させると流出路が広がり、狭窄部を抜け出しやすくなる。このような病態のイメージを持っていると、例えばスクワット(⇨下肢の血液を上へ絞り上げる⇨心臓への還流量↑)をしてもらった状態で聴診すると心雑音が減少することを理解できる。βブロックを処方するのも心室へ血液が充満する時間を作り、充満させた結果として流出路を広げるためと考えると覚えやすい。
・血液の駆出は心筋が一定のリズムのもとに協調運動して行っているが、このリズムが崩れて心筋の協調がなくなると有効な駆出ができなくなる。これが不整脈による失神の原因とイメージすると覚えやすい。
・MI・PE・解離で心機能が低下し、脳への血液供給量が減ると失神するというイメージで鑑別を挙げる
・MI・PE・解離はセットで挙げる疾患で、詰まる・破れる病態であり怖い疾患
・血液は忘れやすいが、脳の気持ちになった時、送られてきた血液が少なかったり薄かったりしたら十分に働けないことをイメージして忘れないようにする。血液の量が少ない=脱水または出血しているから。出血は外傷歴がないなら3つある下の穴で尿路以外を考えれば良い。肛門・膣を考えて、消化管出血、性器出血が鑑別。消化管出血の原因としては胃潰瘍と各種癌の2つがPost CC OSCE 対策として重要。性器出血は子宮の良性・悪性腫瘍。Post CC OSCE的には消化管のみ対策しておけば良い。
・「失神+心臓+N=(腫瘍による)消化管出血」や「失神+血液=消化管出血」はやや無理があるように見えるが、上述のイメージをもとに出している。
・神経は起立性低血圧や迷走神経反射、状況失神を考える。迷走神経反射は発症状況について聞けば検討つくことが多い
@身体診察
・手指消毒をして、意識レベル・外観(陰性でも顔貌について述べられると良い)・バイタルを簡潔に述べてから診察を始める。
・意識レベルに問題がありそうな場合は、TPP=Time / Place / Personの3つを聞いて見当識・認知機能について評価する
・失神は意識を失うが神経症候ではない。心臓、血液、末梢の血管を閉める神経に問題があるから脳が被害を受けて意識を失う。脳自体に問題がある訳ではないので神経症候とは考えない。失神は心臓の症候と捉えた方がよく、失神の患者さんで心臓の病気は見逃してはならない。
・心臓を疑うので3つの首の診察と聴診が有用。頸静脈怒張、手(首)で冷汗、足(首)で浮腫
・余裕があれば外傷検索を行う(項目にはない)
・血液で消化管出血を疑うので、眼球結膜の貧血、腹部診察、DREを考える
・神経で起立性低血圧を疑うので、起立性低血圧を調べる(Post CC OSCE対策的には基本的に不要かもしれない)
・失神で倒れたことによる外傷の可能性があるので頭部外傷など調べる
※多めに書いてある。全て行う必要はなく、個人的には赤線項目の8割程度できれば良いと考える。
#Tips 身体診察編
・失神の鑑別としてTIAを挙げる人がいるため神経症候と考えられがち。しかし、失神は脳の一過性の虚血による意識消失なので、TIAで失神をきたすのであれば、両側の頸動脈が狭窄して両側性に大脳皮質に虚血を生じるか、脳底動脈に狭窄をきたして脳幹に虚血を生じさせるかの2通りしかない(脳全体が障害されるか意識の主座である脳幹が障害されると意識消失する)。これがかなり稀でシマウマ探しになっていることは覚えておく。
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次は呼吸・循環症状 その2 めまいを紹介。