運動麻痺・筋力低下 〜脳・脊髄・末梢神経・筋肉をイメージすれば鑑別・問診はバッチリ〜

運動麻痺・筋力低下のアプローチ方法、鑑別・問診・身体診察からメモの取り方・プレゼンまで紹介。要点まとめを読んでない場合は、こちらを読んでから37症候の記事を参考にすることを強くお勧めします

アプローチ

運動麻痺・筋力低下が課題の時に考えていること

  • 運動麻痺・筋力低下は運動・感覚に関係する症候→神経症候
  • 神経症候は、神経解剖(脳から筋肉までの経路)を考えて鑑別臓器を挙げる
  • 大雑把に脳・脊髄・末梢神経・筋肉のカテゴリ(鑑別臓器)を考える(下図)
  • 必要ならさらに細かく考える⇨(大脳・小脳・脳幹)+(脊髄)+(末梢神経・神経筋接合部)+(筋肉)
  • 症状+臓器で必要な鑑別を挙げられるのが理想ではあるが、難しい場合や最初の段階ではバックアップとして病態も加えて考える
  • 上記の大まかな方針を立てて患者さんを呼び入れる
反射力を高めキレ戻す 体に刺激、神経回路を整える|NIKKEI STYLE

患者を呼び入れてから時間経過を聞くまでに考えていること

  • 自己紹介から詳しく教えてまでを型通りに聞く。メモ用紙に十字を書いて4分割する。
  • 時間経過の問診をOPQRSTやOPD〜のうち必要な項目を聞く。必要な項目は、項目+症状で鑑別が挙がるかどうかで判定する。
  • 症状が片側か両側かについては考える鑑別が異なってくるため重要な問診。
    片側→非対称→出血や梗塞、圧迫などで局所的な異常がある可能性が高い
    両側→左右対称→抗体や毒物など血液中の物質が神経や筋肉に悪さをしている可能性が高い、脊髄の圧迫で両上肢 and/or両下肢の麻痺が生じている
  • ゴロの頭文字をメモに記載。左上にできるだけ医学用語で返答をメモ

症状の有無を聞く時に考えていること

  • 鑑別カテゴリの症状を聞く、鑑別に挙がっている疾患特異的な症状を聞く
  • 症状+臓器で考える
  • 末梢神経に関しては症状+臓器+病態で考える←練習すると鑑別疾患が多いことが分かる。暗記量を減らすために病態を考えると良かった
  • メモするのはカテゴリと問診項目。症状あれば丸で囲む

・運動麻痺・筋力低下+大脳=脳卒中(脳出血・脳梗塞)
⇨脳症状(頭痛、痙攣、感覚障害、構音障害、嘔吐)
※脳出血の場合、脳血管が破れるので痛い。脳梗塞の場合、血管は破れない+脳に痛覚はないので痛くない。脳出血が否定された場合に痛い脳梗塞→解離を疑う
※痙攣は正常な神経回路でなくなると生じるイメージを持つと理解しやすい。血腫で神経回路が圧迫される、梗塞で一部の神経回路が破綻するなど。炎症で神経回路にノイズが入る場合も痙攣は起こりうる。
※脳圧が高くなると嘔吐が生じる。余談だが、脳腫瘍で朝に嘔吐することがあるのは仰臥位で脳圧が高くなるから。

・運動麻痺・筋力低下+脊髄=椎間板ヘルニア
⇨脊髄圧迫症状:腰痛、排尿・排便、両下肢の運動・感覚障害
※運動麻痺+脊髄では圧迫による麻痺が怖い。ヘルニア以外にも血腫(V)、膿瘍(I)、腫瘍(N)、脊柱管狭窄など脊髄圧迫系(A)などによる脊髄の圧迫が考えられる。
※余談だが、AAAなどの術後ではアダムキュービッツ動脈の損傷による脊髄梗塞などがある

・運動麻痺・筋力低下+末梢神経+VINDICATE P2=MG・GBS(I)、甲状腺機能亢進(E)、糖尿病(E)
⇨MG・GBS:眼瞼下垂、先行感染、下肢から麻痺、呼吸困難
※GBS(ギラン・バレー症候群)、MG(重症筋無力症)は自己免疫(I)から連想。これらはセットにしておくと良い
⇨甲状腺:体重減少、眼球突出、動悸、下痢、振戦
⇨DM(糖尿病):体重減少、尿量の変化
※Endocrine→代謝・内分泌→代謝・栄養+内分泌・電解質とカテゴライズしておくと多くの疾患を連想しやすい。
※内分泌を考える場合、視床下部→下垂体→甲状腺・副腎・膵臓という大雑把な命令系統(命令軸)をイメージすると鑑別を挙げやすい(下図)
※甲状腺機能亢進など全身に多彩な症状が出る場合、全身症状→臓器症状(HEENT、心肺、消化管・胆道系、泌尿・生殖器、筋骨格系)と辿ると聞くべき症状を連想しやすい
※甲状腺機能亢進症は主には筋肉の異化による筋力低下と考えられるので、筋肉のカテゴリで出しても良い。個人的には内分泌カテゴリで甲状腺を考えるのでここに記載する
※甲状腺機能亢進やDMを疑っている問診ができれば項目はPCC OSCEの冊子と一致しなくても良いと個人的に考える

15. 内分泌疾患について │ チーム脳外 脳神経外科医のブログ

・運動麻痺・筋力低下+筋肉=PM/DM
⇨PM/DM:筋肉痛、皮疹
※PM/DM(多発性筋炎・皮膚筋炎)
※余談ですが、腫瘍に対する抗体が筋肉、皮膚、肺に対しても作用してしまうイメージを持つと腫瘍合併しやすいことと間質性肺炎を連想しやすい。これらは予後に関係するので臨床的には重要な連想。

既往の問診で考えていること

  • 既往の問診を型通り行う
  • 型のうちPAM FASは聞くことが多い=PMH、Allergy、Meds、FH、Alcohol、Smoke
    PMH=Past Medical History FH=Family History
  • 他に必要な項目があればゴロを使って聞く

心配事とまとめで考えていること

  • 心配事を聞いた後、メモを見ながらまとめを話す。
  • まとめは何を疑っているのか友達に分かるような10秒くらいのプレゼン→心配事を織り混ぜる→身体診察させてくださいという構成を意識する
    (先月風邪をひいて数週間前から歩きにくく、先週から脚の感覚も鈍いのですね。今日は頭痛があって脳梗塞が心配になったのでいらっしゃったのですね。病気についてさらに調べるために次は身体診察をさせてください)

身体診察で考えていること

  • 手指消毒をする+意識レベル・バイタル・全身状態の3つをまず述べる
  • 身体診察は神経診察が必要なものとそうでないものに分けて考える
  • 神経症候なので神経診察をメインに必要なものを行う。その次に頭の先から足先まで必要な臓器を選びながらルーティンの診察をかいつまんで行う
  • 神経診察は時間に注意しながら、脳神経で必要なもの、運動・感覚の評価、バビンスキーなど必要な特殊診察を行う
  • ルーティンの診察では、甲状腺、脊柱、下肢の診察を行う。疾患によっては肺や消化器に症状が生じうるので、余裕があれば胸部や腹部も診察する
  • 行うものの一例を太字で示す
    ※脳卒中を強く疑わない場合、神経診察はFASTに対応するもの+運動・感覚の評価をかいつまんで行なうようにした。時間と相談。
    Face:脳神経の5番と7番→顔面の感覚、額のしわ寄せ、まつげ徴候、笑顔
    Arm:四肢の運動・感覚(MotorとSensation)、バレー徴候(特殊診察)
    Speech:構音障害(Cerebellar)
脳梗塞を見つけるために|心房細動による脳梗塞・脳卒中を予防する

※脳に病変があると疑う場合は脳神経の診察は時間が許せば基本フルで行う。脳に病変がなさそうな場合は怖い病態の除外のため太字を行う。
1番(嗅神経):検査しないことが多い
2番(視神経):視野、対光反射・瞳孔
※出血による血腫→脳ヘルニアが怖いので、対光反射や瞳孔の左右差は確認
3、4、6番(動眼神経、滑車神経、外転神経):追視
5番(三叉神経):顔面の感覚、咬筋
7番(顔面神経):額のしわ寄せ、まつげ徴候、顔面の運動(笑顔)から最低1つ以上
※脳卒中のFASTに該当する項目
8番(聴神経):耳の近くで指擦り
9、10 番(舌咽神経、迷走神経):カーテン徴候
11番(副神経):胸鎖乳突筋や僧帽筋の筋力評価
12番(舌下神経):舌を前と左右に突き出してもらう

MotorMMTで上腕二 / 三頭筋、大腿四頭筋・ハムストリングスを最低限評価。運動

Atrophy:手掌や四肢で視診。萎縮のこと

Sensationティシュで左右の顔、前腕、大腿・下腿を最低限評価。感覚

Tonus:腕や脚を曲げ伸ばしして抵抗を調べる。トーヌス

Involuntary movement安静時振戦など視診で評価。不随意運動のこと

Reflex:上腕二 / 三頭筋、膝蓋腱、アキレス腱を最低限評価。反射のこと
※反射をとる目的は病変の局在が脳、脊髄、神経・筋肉のどこにあるか絞り込むため。必要ならスキップ可能

Cerebellar:指鼻指やキラキラ星などあるが、すぐできるキラキラ星のみで大丈夫。小脳

Autonomic:起立時低血圧の測定。PCC OSCEでは避けても良いかも。自律神経のこと

Gait:転倒に注意しながら歩いてもらう。歩行のこと

Intelligence:意識障害の有無。TPP=Time,place,personについて正しく答えられるかやMMSEなどを評価。知能

特殊診察

バレー徴候:目を閉じてもらい両手を胸の高さまで挙げて維持してもらう(目を瞑って頂戴のポーズ)。片腕が下がれば明らかだが、回内や小指が離れるのも陽性所見→指をきちんと揃えてもらう(特に小指)

・バビンスキー:足の裏をC字にくすぐって足が反り上がれば異常

Head:圧痛の有無など

Eye瞳孔の大きさ・左右差・対光反射、眼球結膜の貧血・充血・黄染など

Ear:外耳の皮疹、鼓膜の発赤・腫脹など

Nose(Sinus):副鼻腔の圧痛・叩打痛など

Throat:咽頭・扁桃の発赤・腫脹・白苔の付着など

頸部:頸部リンパ節腫脹、甲状腺の腫大・結節・圧痛、JVD(頸静脈怒張)

心臓:心音(I音、II音、収縮期・拡張期雑音、3音、4音)

:肺音(両側清で左右差なし、Coarse/fine crackle、Wheeze/Rhonchi)、胸部の皮疹

腹部診察:平坦・軟・手術痕、腸蠕動音の亢進・減弱、鼓音・濁音、圧痛・マックバーニー・筋性防御・反跳痛、腫瘤触知、肝脾腫・肝叩打痛・マーフィー

CVA knock pain:CVA knock painの有無

下肢下腿浮腫・把握痛・発赤、拍動など
※甲状腺機能低下だけでなく亢進でも下腿浮腫が生じる

特殊診察

脊柱背骨を1つずつ押していく(圧痛点を探す→ヘルニアのレベルの推定)、可動域
SLR:Straight Leg Raiseテスト(仰臥位で片足を持ち上げて痛みが出るかみる)
※ヘルニアを疑う場合、両下肢の麻痺がないこと、SLRなどヘルニアを疑う診察を盛り込む

メモの一例

プレゼンはメモを見ながら行う。

  1. メモ左上の時間経過に関するプレゼン
    ⇨一文が長くなり過ぎないように注意。問診がしっかりできていれば、基本的にはOPQRSTを一文が適切な長さになるように読み上げれば大丈夫なはず。
  2. 臓器別の症状に関するプレゼン
    ⇨陽性所見所見、除外したい疾患の所見、よくある疾患の所見、その他陰性所見という流れ
  3. 既往に関するプレゼン
    ⇨読み上げればOK。時間がどうしてもない場合、重要度の低い箇所のプレゼンは省略する。
  4. 身体診察に関するプレゼン
    ⇨陽性所見所見、除外したい疾患の所見、よくある疾患の所見、その他陰性所見という流れ
  5. 鑑別疾患に関するプレゼン
    ⇨一番に疑っている疾患、その主な根拠になる所見3つ程度、他の鑑別とその主な根拠数個、今後の検査・治療

 除外したい疾患とは、命に関わる・機能障害を生じるような疾患のことです。

 運動麻痺・筋力低下であれば、命に関わる疾患として脳卒中(出血・梗塞)、MGの呼吸不全、PM/DMによる間質性肺炎などは怖いです。機能的にはヘルニアによる両下肢麻痺が嫌です。
 慣れてきたら、これらを除外するように意識して診療したことをアピールできるプレゼンができると良いと思います。

~神経症状系のポイント~

・脳が関与するものは基本的に神経症候。直感的にわかりやすいものが多い。

・動作・感覚に関わる症候も神経症候。神経症候であれば基本的に神経・筋の解剖(大脳から筋肉に至るまでの神経学的解剖部位)を頭の中に思い描くことがポイント。

・大脳から筋肉までで想起すべき神経学的解剖部位をざっくり言うと脳・脊髄+末梢神経+筋肉。これを少し詳しくすると脳について、大脳・小脳・脳幹。末梢神経と筋肉の間に神経筋接合部を入れれば完成。筋肉が関係ない脳そのものの神経症候を考えたい場合は大脳・小脳・脳幹の他に基底核や脳室を加えると良い

・まとめると神経症候と判断したら、大脳・小脳・脳幹・脊髄・末梢神経・神経筋接合部・筋肉にカテゴライズして疾患を挙げていく。脳のみで十分な症候では大脳・小脳・脊髄という脳の鑑別カテゴリに基底核と脳室を加える。

・臓器固有の疾患は臓器、病態、症状のヒントから出すことは難しいので、頑張って覚えておくのがおすすめ。脳なら認知症系やNPH、1次頭痛系など。

※PCC OSCEのコアカリの表に記載のある項目(鑑別・問診・身体診察)には赤線が引いてあります。載っていない項目については引いてないので覚える必要はありませんが、学習の役に立つかもしれないので参考までに記載しました。

※鑑別疾患は全て挙げられるようにすることをお勧めしますが、問診・身体診察は8割程度の項目が埋まれば良いと個人的に考えます。

#運動麻痺・筋力低下

@鑑別

・動作に関する症候なので神経症状系。よって、大まかな方針としては、解剖的に神経・筋の経路(大脳皮質から筋肉に至るまで)について考える。最後に血を介して神経や筋肉に悪さをしている可能性があるのでVINDICATE P2でバックアップをかけておく。

・神経学的解剖は上から順に大脳・小脳・脳幹・脊髄・末梢神経・神経筋接合部・筋肉

運動麻痺・筋力低下+大脳=脳卒中(出血・梗塞)

運動麻痺・筋力低下+小脳=ー

運動麻痺・筋力低下+脳幹=ー

運動麻痺・筋力低下+脊髄=ヘルニア(※)

運動麻痺・筋力低下+末梢神経=GBS(ギランバレー)

運動麻痺・筋力低下+神経筋接合部=MG(重症筋無力症)

運動麻痺・筋力低下+筋肉=PM/DM(多発筋炎・皮膚筋炎)

・血を介して神経や筋肉に悪さをしている可能性があるのでVINDICATE P2でバックアップ

運動麻痺・筋力低下+V=脊髄内SAHで血腫

運動麻痺・筋力低下+I=硬膜外膿瘍

運動麻痺・筋力低下+N=骨転移

運動麻痺・筋力低下+D=アルコール依存症

運動麻痺・筋力低下+I=PM/DM

運動麻痺・筋力低下+C=ー

運動麻痺・筋力低下+A=椎間板ヘルニア

運動麻痺・筋力低下+T=外傷

運動麻痺・筋力低下+E=甲状腺機能異常・DM

運動麻痺・筋力低下+P=ー

運動麻痺・筋力低下+P=精神疾患

#Tips 鑑別編

※ヘルニアは椎間板疾患だが脊髄圧迫を生じることがあるので個人的には脊髄カテゴリで挙げている。こうすることで脊髄圧迫⇨下肢運動・感覚異常という連想もしやすくなる。このやり方が感覚に合わない人はVINDICATE P2で挙げるようにする。

・筋力低下が遠位か近位かで神経疾患か筋疾患かを鑑別する目安になる(目安になるだけで決めつけてはいけない)。神経は長いほど障害を受けやすいので遠位の筋力低下では神経疾患らしさがあり、近位の屈曲では持ち上げる部分が多いので、多くの筋肉が必要だがこれができないなら筋肉疾患らしさがあるとイメージする。

・MG・GBS・LES(ランバートイートン)はセットにしておく

・Post CC OSCEでは不要な知識だが、慢性的なアルコール毒性で神経が障害されて手が動かなくなるなど運動麻痺・筋力低下をきたすことがある

・PM/DMでは腫瘍の合併に注意が必要。腫瘍の抗原性に対して抗体ができ、PM/DMのような筋症状を出す自己免疫疾患と考えることもできるのでIカテゴリでも挙げてみた

・Eで内分泌器官を考える時は甲状腺・副腎・膵臓の3カテゴリを考える。甲状腺から甲状腺機能亢進・低下、膵臓からDMと系統的・網羅的に考えられる

・甲状腺機能亢進すると程度は軽いが高頻度に筋萎縮が見られる。異化作用で筋肉が少なくなるイメージで覚える。東洋人男性に多い低カリウム性周期性四肢麻痺も甲状腺機能亢進症の重要な筋合併症

・甲状腺機能低下でも筋力低下があり、Hypothyroid myopathyという言葉がある。異化機能低下で筋肉にムチンなど(ゴミ)が蓄積するため、筋細胞が死んだり、肥大による痛みが出るイメージで覚える。

・DMは血管をボロボロにする病気で、ボロボロの血管から栄養をもらえない神経が障害されて運動麻痺・筋力低下・感覚障害を生じる

・転換性障害、身体表現性障害など。アルプスの少女ハイジのクララのイメージ(諸説あり)

@問診

・詳しく教えてください⇨OPD系をかいつまんで聞く(疑う疾患で多少異なってくる。必要だと思ったものを聞いておけば良く、完璧を目指す必要はない)

・個人的にはOnset, Progression, Setting, Location, Assosiated(Duration, Constant, Frequency, Intensity, Quality, Radiation, AA, Similarは基本不要)を聞く

・Settingでは何をしていた瞬間に痛くなったかが言えるか確認し、言えれば突然発症=詰まる・捻れる・破れると考える(脳卒中)

・関連の問診で、MGを狙って時間との関連について聞く

・脳の症状として、頭痛、感覚異常、痙攣、嘔吐などを聞く

・脊髄の症状として、腰痛、排尿障害、排尿量などを聞く

・末梢神経でGBSを疑って、先行感染を聞く

・神経筋疾患でMGを疑って、日内変動、眼瞼下垂を聞く

・筋疾患ではPM/DMを疑って、皮疹や筋肉痛を聞く。腫瘍の合併を連想して体重減少、食欲低下、全身倦怠感などの全身症状、血痰、血便などを時間があれば聞いても良い

・次は病態カテゴリから問診することを考える

・Anatomyのヘルニアでは腰痛を聞く

・Traumaでは外傷を聞く

・Endocrineでは甲状腺機能異常を狙って、全身症状:体重変化・暑がり・寒がり、Thyroid:頸部腫脹、心臓:動悸、消化管:下痢・便秘、四肢:下腿浮腫(non pitting)などから適当なものを聞く。DMでは食生活や健診で血糖異常が指摘されてなかったかなど

・Psychoではストレスを聞く

・既往はPAM系を聞く。どの症例でもPMH, Allergy, Meds, FH, Alcohol, Smoking, Occupationは最低限聞くと良い。女性の場合、月経・性交歴が必要かどうかは必ず考える(関節痛では基本不要)

・まとめと心配事を聞く。

※多めに書いてある。全て聞くのは時間的に厳しいので赤線を優先・疑う疾患を確かめるために必要な項目を聞く。個人的に赤線の項目が8割以上聞ければ良いと考える。

#Tips 問診編

・頭痛について、脳出血は痛いが、脳梗塞は痛くない。脳出血は神経がまとわりついている血管が破れるので痛みを感じるが、脳梗塞は痛みを感じる機能を持つ神経が虚血により機能不全になるので痛みを感じないとイメージする。脳出血も血腫などで神経が圧迫されれば運動麻痺等の神経症状をきたすことがあるので、頭痛の有無は鑑別に役立つ。脳梗塞様の症状なのに痛みがあってCTで脳出血が否定的な場合、解離を疑う

・痙攣について、一般に脳に占拠性病変(血腫、膿瘍、腫瘍など)があると痙攣が生じることがある(病変があるせいで神経回路がおかしくなっているイメージで覚える)。痙攣がなくても否定はできないが、あれば占拠性病変があるのではないかと疑う。痙攣は忘れやすいので注意

・嘔吐は脳圧が高くなると生じる。脳ヘルニアの有無などを評価するために必要。嘔吐は頭、胸、腹、骨盤を考える=要するに嘔吐はほぼ全身考える全身症状で便宜的に消化管セットに入れている症状にすぎない

・腰痛があり、脊髄の圧迫がありそうなら、下肢の麻痺、排尿障害の有無など背中より”下”に関することを聞く

@身体診察

・手指消毒をして、意識レベル・外観(陰性でも顔貌について述べられると良い)・バイタルを簡潔に述べてから診察を始める。

・動作・感覚の症状なので神経症候⇨神経診察をする。神経系以外にも鑑別臓器が挙がっているので一般診察を行うことも考える

・脳卒中など脳を疑う場合は神経診察をメインで、脳ではない末梢の病変を疑う場合は神経診察と一般診察をハーフハーフのイメージで行うことを考える

・神経診察=脳神経+MASTIR CAGI+特殊診察

・脳が鑑別の上位の時は、脳神経診察を考える。時間に注意。全て行う必要はない。

瞳孔不同・対抗反射(2番)

追視(3、4、6番)

顔面の感覚(5番)

顔面神経麻痺の有無(7番)など

・MASTIR CAGIではMotor、Sensation、Reflexを行えば良いと考える

・Motor(運動)では上腕二・三頭筋と下腿四頭筋・ハムストリングスのMMTを評価

・Sensationは前腕・上腕、下腿についてティッシュで触れて触覚・痛覚を評価。DMが疑われる場合には振動覚を考えても良い

・Reflex(反射)は、肘・膝・かかとの3つを見ればPost CC OSCE 対策としては十分だと個人的に考える

・特殊診察では鑑別部位に脳が挙がるなら、バビンスキーやバレー徴候などを時間があれば。

・特殊診察では、鑑別部位に脊髄としてヘルニアを挙げるので、脊柱・背部の叩打痛、SLRなどを調べる。

・一般診察では、上から下にかいつまんで見ていく

・甲状腺が鑑別なので眼球突出を述べた後、甲状腺の診察、下腿浮腫の評価をする

※多めに書いてある。全て行う必要はなく、個人的には赤線項目の8割程度できれば良いと考える。

#Tips 身体診察編

・2番を診察するのは、脳ヘルニアがないか確認するため

・追視をするのは複視が見つかるから。MGやDMなどで複視が出ることを連想

・脳梗塞の場合は顔面神経麻痺の有無は調べると良い。中枢性(脳梗塞など)か末梢性(ベル麻痺など)かを鑑別するのに有用だから。

・脳神経では、その他カーテン徴候や舌の運動の評価などを考えても良い(時間があれば)

メモ・プレゼンへのリンク貼る

次は神経症状 その2 嚥下困難・障害を紹介。

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